1月の読書メモ 後半2020年02月01日 20:05

快晴の渋谷 ハチ公前スクランブル交差点
2020年1月もあっという間に終わりました。後半の読書備忘録です。

横浜ヴァイオリン工房のホームズ 上津レイ メディアワークス文庫 610円20181222
横浜本牧の趣深い建物に、家賃4万円で入居できた僕、管理費光熱費響子込み、という契約書に疑問を感じつつそこに住むことに。
響子さんは、若くして天才的なヴァイオリニストだったが、今はヴァイオリンの作成販売、修理をしていて、人間離れした聴覚をもつ。しかもその特技を活かして名探偵として知られているようだ。設定と人物像が興味深い。途中で記述間違いのような箇所があるが、美人と鈍感まじめで女子力高い草食大学生の僕。ほほえましいので良しとしよう。

鍵屋甘味処改5 野良猫少女の卒業 理沙 集英社オレンジ文庫 550円 20170125
 鍵屋の淀川とこずえ、高校卒業を機に、結婚前提の同居をはじめる、というハッピーエンドでほほえましい。このシリーズも5巻で一応完結した。若い人の物語は、よくも悪くもまっすぐな人が多く出てきて、読んでいて楽しい。希望や夢、ときめき、そういうものが当然のように目の前にあって、未来に向かって頑張れるのだ。もはやそういうことから遠く離れた高齢者としては、つい高みから斜に構えてみてしまう。幼いなあ、なんて。
いけないいけない、とまた物語世界に帰っていくのである。

つつじ和菓子本舗のつれづれ 鍵屋の隣の和菓子屋さん 梨沙 集英社オレンジ文庫 550円 20180425
 鍵屋の弟、多喜次くんは高校卒業と同時に隣の和菓子屋さんに住み込み
実は、兄の幼馴染のゆう子さんにプロポーズしたが、断られていないので、返事を恐れつつ期待している。真面目な熱血青年を手の上で転がしつつ?ゆう子さんの気持ちもいつかは動きそうな良い雰囲気。和菓子のうんちくもありつつ、ほほえましい。

末ながく、お幸せに あさのあつこ 小学館文庫 600円 20200112
 結婚式の祝辞は、頼まれると気になって、何日も前からいろいろ考えて、当日はお食事ものどを通らない、という思いをする方も多いでしょう。
友人、上司、親戚、、と頼むほうも頼まれるほうもいろいろ考えますね。
その祝辞と、これまでの新郎新婦との関係性が丁寧に書かれていて、共感できます。新郎新婦の人柄やこれまでの成育歴なども聞きながら浮かび上がってきます。いつもながら安心してこの世界に浸れるあさのさんの作品でした。

シャルール 土曜日だけ開くレストラン 田家みゆき 文芸社文庫NEO 620円 20200115
 レストランサービス技能士3級の資格を持つ作者らしく、レストランの支配人の所作やサービス状況などを違和感なく描いている。岡崎支配人はこの素敵なフランス料理店で30年のキャリアを持つベテランとの設定だが、作者が若いせいか、読んでいると、どうしても若いウエイトレスを想像してしまうのが面白い。途中で、おっと、実は熟年男性である、と自分に言い聞かせたくなります。それぞれのエピソードは、ぬくもりを意味するシャルールにふさわしく、古めかしいが温かみのあるものです。最後はできすぎのハッピーエンド。ほほえましいです。

隻手の声 鬼籍通覧 椹野道流 講談社文庫 700円 20191213
 新装版6冊目、伊月くんはミチルの薫陶を受けつつ、法医学の勉強を進めているが、今回は兵庫県の監察医に出張、目が回る忙しさの中で、また多くを学ぶ。読んでいると日本の解剖現場の忙しさについては、海堂尊さんが書いていたころとあまり変わっていないのだと思う。お医者さんにも事情があり、みんなが解剖医になる訳にはいかないのですが、介護と看護と同じように、人手のいる仕事なのに、なり手が少ないんですね。
 ともあれ、ネットゲームと現実のキャラが、同定できる例は少ないと思いますが、それが伊月くんのスカーとブルーズ、どうも親子鑑定にきた小学5年生の女の子ではないかと思われます。ゲームを通して現実より深く語り合う二人。そして幼い兄が妹を殺してしまう悲劇を明らかにして、その子の心を救う伊月くん。

星の子 今村夏子 朝日文庫 620円 20191230
 「こちらあみ子」、「あひる」と読んできて今村作品3冊目。文庫の終わりに小川洋子との対談付き。いつも報われなさについてと暴力があると小川からの指摘。小さい時からのつらかったことをテーマに書いていて、ハッピーな結末のものはかけないだろう。大人になるとそれほど大変な思いをしていないので書くことがない。などと答えている。星の子のエンディングは、この家族にとって一番幸せなかたちであると。初めに考えていたものは不穏な形だったので、編集者と相談して変更した。と率直に話しています。
宗教にのめりこむ人、それを温かく見守るか、冷ややかに見るか、その中にどっぷりと浸って育った子供はどうなるのか、突き詰めていくといろいろな切り口で物語が立ち上がってくる事情ですね。

喫茶「猫の木」の秘密 猫マスターの思い出アップルパイ 植原翠 マイナビ出版ファン文庫 647円 20170920
喫茶「猫の木」の日常 猫マスターと初恋レモネード   植草翠 マイナビ出版ファン文庫 647円 20170420
 猫マスターの癒しの一杯 から始まる物語全3巻。なんといっても猫のかぶりものをつけてレトロな喫茶店を営む片倉さんと、常連OLの夏梅の恋の物語。篠崎さんという理想のお婿さん候補のようなライバルや、真智花ちゃんという肉食系?ライバルなども現れてひたすらのどかな、猫の日向ぼっこのような日常は慌ただしくなり、結局落ち着くのだけれど、猫を媒体にして紆余曲折がほほえましい。

硬い爪、切り裂く指に明日  菅野彰 河出書房新書 1500円 20181130
 3歳の誕生日から前の記憶がない平良と、年を取らない父眞宙(今では平気で兄と言いつくろっている)との静かな暮らし。東日本大震災後に建てられた住宅街に住み、今までのことを詮索されない状況で、非常識に見える父親との関係を周囲に目立たせないように細心の注意を払ってカバーして生きる平良。やっと一人できた友人の朝陽、匠の兄への思いに強く惹かれて、家庭教師を買って出る平良。彼の成長に伴ってこの静かな暮らしはこれから変わらざるを得ないだろうという緊張感にハラハラする。作者は福島県生まれのためか、背景となる復興住宅のある地域の描写が、あの大震災後の風景をせつなく想起させる。

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