春分の日の読書メモ 終戦を願いつつ2022年03月20日 13:54

谷口ジロー
 桜が咲くか咲かないか、という春分の日です。

ロシアが起こした戦争が始まって3週間。
人がむなしく死んでいく様子。
爆弾が落ちて綺麗な街並みが破壊される様子。
ネットを見ていると辛くて心が痛むばかりです。
あまり本を読む気分にもなりませんが、少し読むとどうしても戦争のこと、人は昔から人殺しばかりしてきた歴史というのを考えてしまいます。


散歩もの  作・久住昌之  画・谷口ジロー  扶桑社文庫 607円 2009年10月30日
 晴れた日に、世田谷文学館の展覧会に行き、改めて好きになりました。昔、子供向けのシートン動物記の作画でその熊や狼の生き生きとした様子に感動したものです。
父の暦(1994年、ビッグコミック、小学館)
孤独のグルメ(原作:久住昌之、1994年 - 1996年、PANjA、扶桑社 / 2008年 - 、SPA!、扶桑社)
神の犬 ブランカII(1995年 - 1996年、ビッグコミック)
晴れゆく空(2004年、週刊ヤングジャンプ、集英社)
シートン(監修:今泉吉晴、2004年 - 2006年、漫画アクション / 2006年 - 、双葉社Webマガジン、双葉社)
大いなる野生(1980年、オハヨー出版)新・大いなる野生(1985年、祥伝社)
谷口ジロー選集 ブランカ(2009年、小学館)
犬を飼う そして…猫を飼う(2018年、小学館)などを読みました。
原画は大変繊細で、一点ずつ額絵に成るほどのクオリティです。


眠れないほどおもしろい吾妻鏡  坂野博之 
       三笠書房 780円 2021年12月20日
テレビがないのですが、ネットでは源平合戦、鎌倉殿が幕府を開く時代が今盛り上がっているようです。
勤務の都合上よく行った旭区は、畠山重忠の縁の地で、区内に首塚、区役所の駐車場に首洗い井戸というのがありました。
 ウィキペディアでは、頼朝の武家政権樹立に尽力し、智・仁・勇を兼ね備えた「鎌倉武士の鑑」と称されていたが、頼朝死後の1205年(元久2年)6月22日、北条時政の謀略により武蔵国二俣川で最期を遂げる。横浜市旭区にある首塚は、弓の名手といわれた愛甲三郎季隆の矢に倒れた重忠の首が祀られた場所と伝えられている。と紹介されています。
本の帯に、「北条氏が脚色した鎌倉幕府の公式レポート」とあるように、全部が史実かわかりませんが、源頼朝という人は、プーチンのように、権力を握り、維持するために策略や謀略をめぐらし敵と思う人々を殺し尽くしたのだな、と改めて思います。

 ロシアによるウクライナの破壊と大量殺人には、怒りと為す術もない無力さを感じます。
どちらの国も自分たちが正義だと信じ込んでいる恐ろしさを感じます。プーチンの言葉を聞くと、吾妻鏡の時代から1000年過ぎてもまだ,なにが正しい史実か、この21世紀ですらわからない、と驚きます。
日本もこのように、殺し殺されて歴史を紡いできたのだと分かります。人間というものは、理性も知性も力がなく、最後は所詮殺し合う、弱肉強食の生き方しかしないのでしょうか。

それでも敗戦後の日本は、国としては他国の人を殺していないです。
戦争しないというだけで大変立派なことです。
憲法9条は素晴らしい。
いつ殺されるか、いつ頭の上に爆弾が落ちるのか、怯えながらそんな世界に生きるのは嫌です。
それでなくてもコロナや地震や台風や集中豪雨の被害が甚大です。原発の恐怖からも逃げることができない弱いわたしたちなのですから、戦争なんか起こさない取り決めを考えるほうが有益です。

かたづの 中島京子 集英社文庫 760円 2017年6月30日
この物語の語り手は遠野の羚羊の欠けた角、片角かたづの です。
 南部氏当主直政の妻 祢々。夫と幼い息子久松が立て続けに不審な死を遂げた直後から、三戸南部氏・利直の謀略。次々とやってくる困難を、夫に代わって南部氏当主を次ぎ、「戦で一番大切なことはやらないこと」を信条に、娘を失い、城も失いながら、藩の人たちが生き抜く術、戦のない国を模索し続けていく。
「武士は死ぬのは怖くない。死に場所がない方が困る」
「死ぬにあたって大義がないのが嫌だ」
「自分が撃たれることでこの土地に新しい筋道が立つのであれば、それを大義として死んで行ってもいいのだ」
こういって勝ち目のない戦を起こそうとする武士を説得し、賛同者を募って雪深い遠野へ移って行く。その後しばらく遠野藩は平和であったとかたづのが語る。
 現実世界では、ロシアが一方的に攻め込んできた戦争が3週間も続いている。多くの人が虚しく死んでいくのを見ているしか無いのが辛いばかりの私です。
ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキー。
2022年2月21日の時点で、キエフ・インディペンデント紙の編集長は、怒りに満ちた論説でゼレンスキーを「気落ちするほど平凡」「彼は自分自身のジェスチャーのほうが、もたらされる結果よりも重要だと思っているようだ」と彼女は書いている。
その2日後、ロシアが侵攻してきた。
MICHAEL IDOV (マイケル・イドフ)、 ロサンゼルス在住の映画監督は「我々は、今こうしている間にも命の危険にさらされている人物をアイドルにしているのだ。ゼレンスキーはスーパーヒーローでも、ミームでも、プーチンやトランプに対する復讐劇のための器でもない。
私たちにできることは、彼を見て、もし私たちがこのような想像を絶する任務に就いたなら、彼と同じことをする勇気が自分にもあるのを願うだけである」と書いています。
「私はここに居る、ロシアには負けない」という、
彼の地の人々は、まだ武士の時代を生きている、生きざるを得ないのでしょう。
悪賢い叔父の南部利直が、プーチンなのです。
祢々のような人が現れて、知恵をめぐらして多くの人が死なない方向を探してほしいと切に思います。


中山七転八倒  中山七里 平成30年7月   幻冬舎
2016年11月から2017年11月までピクシブ文芸に掲載されたもの編集版
人間とは思えないほどの 出版数と 多分野にわたる 作品 を誇る中山七里の日記 。
昔、筒井康隆の日記を読んだ時のように作為ある 作家の作品だと思いましたが、リアルで実感がありすぎです。
日記の形をした作品としか思えないですが、 編集者とのやりとり、出版業界の内実 、書店との関わり、また各種 の 文芸賞に入選するためにはとか、受賞を果たした 新人作家には、その後の地獄のような作家生活 を指南していて大変参考になるでしょう。
そもそも、自分の見た映画、自分の読んだ本についてネットで公表するものの気が知れない 、その人の教養の無さが露呈するだけ、にはハッとしてちょっと反省。
私がこのブログを始めた頃から17年、訪問する人は少ないので自分の備忘録 として書いてきましたが 、うっかり読んだ人からは あーこういう残念な人なんだと見られるという事実に冷や汗。
なるほど なるほどとあちこちで 感心してしまいました。
ほとんど文庫で読んでいますが 、どの作品も博覧強記で面白く 余裕しゃくしゃくの 作風で す。
毎日映画1本以上見て、読書一冊以上しないとダメな上に、新作のプロットを作り25枚は原稿を書くとのことです。
担当編集者が言うには、3日で、テーマ、トリック、ストーリー、キャラクターの順でプロットをかためて、全体を4章から6章に分け、 頭の中で最後まで原稿を書き、その段階で推敲もすませてしまうらしいです。あとは書くだけなので、締切より早いとのことです。
それなのに日記の中では毎日毎日締め切りに追われ、ハワイに行こうが、イタリアに行こうが締め切りに追いまくられている。 少しでも伸ばしてもらおうと言い訳を考えている。 またそういう中で毎日映画を何本も観たり本を読んだりしている。どっちが事実なのか、、、

一時「中山七里は数名いる」「きっと7人いて 書いている」と云われましたが、それも無理ない超人ぶりですね。
「書きたいものを書いたことはない」「作家はばけもの」ですって。
ピッコマでリアルタイムで読んでいた方々には、とっくに知られていることだと思いますが、こういう本当らしい日記は、 いろいろ裏読みをして 2度楽しめる気がします。

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