2021年12月の読書メモ2021年12月29日 12:55

友人からのクリスマスプレゼントは絵本

 
 クリスマス飾りをしまい、お正月用品を用意しました、
ドアに飾りを掛けました。
本はあまり読めなかったのです。スマホでは何冊か読んだのに、どうも紙の本のようにメモを残す気になりません、また眺めるのも楽だからでしょうか。
お正月もだらだらと本を読んだり寝転んだりですごすかなあ。

中野のお父さんは謎を解くか  北村薫  
      文春文庫 680円  2021年11月10日
前作「中野のお父さん」に続く第2弾。
編集者の田川美希の中野のお父さん、高校の国語の教師で本好きで博覧強記、知恵袋、、なんとも作者自身を活写しているお父さんが、地味に鮮やかに謎を解く過程が痛快です。
この文庫本には オール讀物に 掲載された、2016年5月から2018年12月までの9編が 収められています 。
目次を見ると
縦か横か
水源地はどこか
ガスコン兵はどこから来たか
パスは通ったのか
きゅうりは冷静だったのか
100万回生きたねこは絶望の書か
火鉢は飛び越えられたのか
菊池寛はアメリカなのか
 という興味深い 謎の数々です。
尾崎紅葉の弟子・徳田秋声と泉鏡花のこと。 尾崎紅葉が 若くして 亡くなった時、秋声が 「紅葉は甘いものが好きで 甘いものばかり食べていたから、早く死んでしまった」 というのを聞いて、泉鏡花が 二人の間にあった火鉢を飛び越えて秋声を殴りつけた。その後、帰りの車の中で秋声は泣いていたということです。
というような文章から尾崎紅葉という人と、秋声と鏡花の関係を解き明かすお父さん。
ヒントは、 里見豚と言う 作家が20年前の話として一度書き、 そのまた20年後に、そのことを思い出して書いた こと。ここで 記憶の上書きと、作家の 手になる 思い出話はどういう風に 脚色されるか、というようなヒントもある 。
火鉢を飛び越えて 相手を殴る という印象深い場面 果たしてその真相は?
各短編とも読み終わると なるほどなあと深く感銘し その作品やその作家に また会いたくなリます。
すぐに本を読み返したく成る。
このように 読む者に深い共感と 知的興趣を起こさせるのは、ひとえに作者が 本好きであり、作家のことを知り、 資料を渉猟した結果であると わかる。
またこのように、知的な興味を引き立ててくれる先生に教わる醍醐味がある。まことに生徒がうらやましい、と思う書き手・先生である。

国王の受難 デルフィニア戦記外伝4  茅田砂胡  
          中央公論新社 1000円  2021年12月25日
 デルフィニア戦記が ノベルスになったのが1993年 。息子が 高校から大学の頃読みふけっていたものを 譲り受けて 一気読みしてから もう28年も続いていることになります。
今更ながら、作者も上手になり、 物語の世界感もこなれてきていっそう面白いと 思います。 物語が 進んで行くと、このファンタジー 世界も深く広く 広がり、 登場人物たちが ありのままに その世界の中で日常を過ごし、 私も違和感なく浸れる幸せがあリます。
本作は 、王女誕生までの七日間、鷹 は飛んでいく、国王の女難、男の修行、 嵐のあと と言う 中編・短編 集です。
グリンダがウォルの養女から王妃になる顛末、花嫁衣装の仕立てにまつわる、仕立て屋の話し、形だけの花嫁をもらったウォルの子孫を案じて、バロルとイヴンが女性を見繕ってあてがおうとするドタバタ、あの銀髪美人の家事一切有能な暗殺者、ファロットのシェラが、なんと男らしい自由戦士に返送しなくてはならない大変さ、それを陰ながら見守る、レティシアとヴァンツァー、初めてのお使いさながら、ちょっとドキドキハラハラする。最後は、橋がかかるまで止めてもらうのに、働き続ける鈍感なウォルと、おっとりしたポーラ・ダルシニとの 出会い始めの顛末。
始まった頃は、さほどとも思えなかった、この時代の男尊女卑の思想とか、身分制度の縛りとか、特権階級のすごい贅沢とか、現代社会に置いては看過できないような世界に、ファンタジーとはいえ、引っ掛かりを感じてしまう、現代日本の特権海峡思い浮かび、憎たらしくなること請け合いです。


AGAIN  DEAD LOCK 番外編3 英田サキ   徳間書店キャラ文庫
                  650円 2021年11月30日
2006年にDEADLOCKが発表されてから、16年にわたって
DEADLOCKシリーズ(徳間書店)
DEADLOCK -DEADLOCK(1)*
DEADHEAT -DEADLOCK(2)*
DEADSHOT -DEADLOCK(3)*
SIMPLEX -DEADLOCK外伝*
HARD TIME -DEADLOCK外伝
STAY -DEADLOCK番外編集1
AWAY -DEADLOCK番外編集2
OUTLIVE DEADLOCK season2(1)
PROMISING DEADLOCK season2(2)
BUDDY DEADLOCK season2(3)
と続き、今回の番外編で12冊となった。やはり、ユウととディックの愛の強さと深さに感動するシリーズだけれど、だんだんそういうカップルが増えて、みなそれぞれなのに、それぞれに微笑ましいほどパートナーに忠実で誠実で、読むと幸せのおすそわけをもらった気分になれます。

またあおう  しゃばけ外伝  畠中恵  新潮文庫 590円 令和3年12月1日
こちらも文庫になってから読み始めて、はや18年。
快調に続き、江戸の長崎屋といえば人に紹介できそうな気がしてきました。
こんな病弱なお坊ちゃまが主人公なのに、弱さの中に強さと優しさを秘めた性格も好ましいので新刊が出るたびに購入してきました。
『しゃばけ』2004年4月1日発売、ISBN 4-10-146121-X
『ぬしさまへ』2005年12月1日発売、ISBN 4-10-146122-8
『ねこのばば』2006年12月1日発売、ISBN 4-10-146123-6
『おまけのこ』2007年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146124-3
『うそうそ』2008年11月14日発売、ISBN 978-4-10-146125-0
『ちんぷんかん』2009年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146126-7
『いっちばん』2010年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146127-4
『ころころろ』2011年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146128-1
『ゆんでめて』2012年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146129-8
『やなりいなり』2013年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146130-4
『ひなこまち』2014年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146131-1
『たぶんねこ』2015年12月1日発売、ISBN 978-4-10-450718-4
『すえずえ』2016年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146134-2
『なりたい』2017年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146135-9
『おおあたり』2018年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146136-6
『とるとだす』2019年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146137-3
『むすびつき』2020年12月1日発売、ISBN 978-4-10-146138-0
『てんげんつう』2021年7月1日発売、ISBN 978-4-10-146139-7
今回、若旦那は寝ているばかりで、若旦那を見習ったあやかしたちが、なんとか事件を解決に導くという離れ業。皆を知り尽くした作者が、ますます自在にあやかしを働かせる様子が楽しいです。


ハケン飯友 僕と猫の、食べて喋って笑う日々
 椹野道流(ふしのみちる) 集英社オレンジ文庫 
                580円 2021年11月24日
 シリーズ3冊目で 一緒にご飯を食べてくれる猫が 面白い。 内田美奈子さん のイラストが 可愛らしい。坂井は山猫軒の雇われマスターで大家さんの 沖守さん 、宮司の猪田さんはパン屋さん と兼業。猫から人間の姿になると何でも食べられる 神社の猫。
登場人物のユニークさと みんなが 互いを十分思いやって穏やかに過ごす有様が 老後の理想郷のように思える。私はオーナーの 沖守さんに 感情移入するのだが、なかなか 真似はできない 。知識と教養があって料理が上手で素晴らしい西洋館に住んでいる。
心臓に持病があるものの、 若くて料理上手な 友人ができて、面倒を見てくれる。
山猫軒のお客様とも地域の方とも うまくやっている。こういう高齢者が 落ち着いた地域をつくるのだと思う。
 
辰巳八景 山本一力  朝日時代小説文庫 740円 2021年4月30日
八景とあるとおり短編8編でできている 。
永代橋帰帆
永代寺晩鐘
仲町の夜雨
木場の落雁
佃町の晴嵐
州崎の秋月
やぐら下の夕照
石場の暮雪
解説の縄田一男氏によれば 長唄 の巽八景
〜大江戸 と ならぬ昔の武蔵野の 尾花や招きよせたりし 恋と情けの深川や 縁も長き永代の 帰帆は粋な送り船〜
から想を得たものだそうです。
ろうそく問屋 、鳶職、医者 というように 確編の主人公の職業がその先代にまでさかのぼって詳しく描かれていること、赤穂浪士、田沼意次の事件 なども盛り込まれ 江戸庶民の通史ともなっていることも指摘されています。
浅間山噴火の火山灰が降っている有様など 要所要所に史実が入り人情の機微と共に読み応えがあるります。とにかく 火事が多い。せっかく積み上げたいろいろが 火事で 一旦全て無くなり、必ずまたそこから立ち上がる庶民の しぶとさ 粘り強さ 、生きる強さが感じられます。江戸の町のあちこちに今と変わらない 人々 、今よりもっと強い人々が 細やかな 情けと誇りとともに生きていたことを感じて、 読み応えある短編集です。

残りは、メモを書いたか不明な紙の本たち。
ヒポクラテスの試練 中山七里  祥伝社文庫  
               720円 令和3年12月20日
異邦人 原田マハ PHP 文芸文庫  840円 2018年3月22日
すごすぎる 天気の図鑑 荒木健太郎 KADOKAWA
         2021年4月30日 1250円
未来 湊かなえ 双葉文庫 780円 2021年8月8日
13歳からのキリスト教  佐藤 優  
           青春出版社  990円 2021年8月15日
あなたの贅肉落とします 垣谷美雨  650円 
           二葉文庫 2019年11月17日
死ねば宇宙の塵芥 曽野綾子・近藤誠 
          宝島社新書 700円  2018年8月2日
ボケ日和  我が家に認知症がやってきた どうする? どうなる?
     長谷川嘉哉  かんき出版1300円  2021年4月19日
老いるとはどういうことか 河合隼雄
         講談社アルファ文庫 750円 1997年2月20日
消えない星々との短い接触 原田マハ 
           幻冬舎文庫  500円 平成3年8月5日
にゃん !  あさのあつこ  祥伝社文庫  
               780円  2021年 8月20日
医学のたまご 海堂尊 角川文庫 720円 2020年 4月25日
アクアマリンの神殿 海堂尊 角川文庫 760円 平成28年6月25日
生きるぼくら 原田マハ 徳間文庫 690円 2015年9月15日
明日の記憶 萩原浩 光文社文庫 69円 2007年11月26日
モネのあしあと 原田マハ 幻冬舎文庫 500円 令和3年4月10日

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