夏至までの読書備忘録2022年06月21日 15:37

夏至はこうであってほしい


  昨日から蒸し暑さに負けてクーラーのお世話になっています。
これから9月まで長い夏。
私に電力の節約なんてできるのかしら、、

 スマホのゲームとネットの読書とで目が疲れます。
スマホを手離せない若者が多いそうですが、気持ちわかります。
次々と楽しいことが見つかるし、ツイッターもおもしろいし、、、
紙の本も楽しいですが、最近は読書の時間が減りました。

姑の遺産整理は、迷惑です 柿谷美雨 
         双葉文庫 650円 2022年4月17日
 これまでに、老後の資金がありません、あなたのゼイ肉落とします、あなたの人生片付けます、夫の墓には入りません、希望病棟、もう別れてもいいですか、リセット、、などなど中高年女性が日頃思っているようなことを赤裸々に書いていて、そうそう!と膝を叩きながら読む作家です。
でも多くの人が、なんだかんだ言って人生や、家庭に折り合いをつけるように、この物語も読後感がすごく良くて、ホッとして救いがあるなあと思います。
人の裏表と言うか、見えている一面以外の面をいつも見せてくれます。確かに人は相手により、状況により見せている面が違います。自分だってそうやって生きているのに、つい相手のことは決めつけてしまう。この自分勝手さに改めて気づかされます。
なんでも完璧できちんとしていて、尊敬していた母も、見方を変えれば、自分にも厳しく、人にはもっと厳しかっただろう。
息詰まるようなお嫁さんの立場も想像できます。
 義母亡き後、団地4階の部屋を片付けに入った望登子。物に溢れた部屋を前に途方に暮れる様子が我が身につまされます。
義母の迷惑千万な面を実母と比べて恨みながら、4階までの階段を重い荷物を持ってゴミ集積所まで昇り降りする苦労。
それはもう恨み事だらけでしょう。私にも到底できそうもありませんと、読みながら一緒に苦労してしまいます。
でもその団地で温かい人間関係を作ってきた義母の生前の生き方が、隣人や日記からわかるに連れて、その思いも変わるのです。
今の世の中、性善説では到底考えられない出来事が起こります。
それでも人は善だと思いたいです。
そう思わせてくれる作者のまなざしがすてき。
また次作を期待します。

明日へつながる五つの物語  あさのあつこ 
       角川文庫 620円 令和3年10月25日
短編集で、
・この手に抱きしめて(がん治療中の父と結婚目前の娘)
・烏城の空(偉大な父の跡を継いだ領主綱政と、父に長く使えた天才津田重次郎永忠、彼が大阪から招聘した石工集団、藤吉)
・カレシの卒業(16歳の糸井愛莉と、12000光年彼方から宇宙環境学の研究に来たという唐川美馬の恋の行方)
・フィニッシュ・ゲートから(待つのは南野悠斗、靴職人。東京マラソンを走る北村湊、同じ高校の陸上部員だった2人。ランナーとは走る者を言う。現世の何を背負おうとも、ただ純粋にまっすぐ走り続けられるものだけをランナーと呼ぶのだ)
・桃の花は(桃は記憶の花。桃畑に捨てられた美佐と那留。
10歳の年令差の恋)
の五話が収められている。
解説の近藤史恵が、
「あさのさんの小説は、どれも自分のことが描かれているような気がする。時代小説だとか、 SF だとか、自分とは無関係な中年男性の話でも、「ああ、この感情には覚えがある」と感じる。
それはあさのさんが、野の花をそっと摘むように、誰の心にもある柔らかな部分をすくい上げて描いているからなのだろう」と書いている。
「バッテリー」からのファンである私には、そうそうよくわかる、と共感するばかりです。全作がお気に入りの作家さんです。

医者の本音 患者の前で何を考えているか   中山祐次郎
           SB 新書 820円 2018年8月15日
4年前に買ってパラパラっと読み、積んでおきましたが、思い出してまた読み直しました。
親戚のお医者さん、子供の時かかったお医者さん、仕事で出会ったお医者さんを思い出しても、皆それぞれ自分の仕事に誠実で患者のために尽くす方ばかりでした。
昔は昼夜厭わず、休みもなく、往診も普通でしたね。
中山先生は若いですが、その人の死生観を引き出し、家族のことも考えて親身になって忙しく働いています。読むほどに医者の本音という、その言葉に込められた真意が納得できます。
目次の
・医者の本音 〜 その一言に込められた真意
・医者は言わない薬・手術の本当のところ
・病院の本音 〜 患者の都合 医者の都合
・医者のお金と恋愛
・タブーとしての「死」と「老い」 〜 人の命は本当に平等か

このどれもが納得できます。人が死ぬ確率は100%です。
私ががんで、あと半年生きながらえるために、みんなが納めた健康保険料をいくらまで使うことを許されるのか、、、
誰でも長く生きれば癌になるんです。そう考える時、超高齢社会の中の多死社会では、命とお金の問題ははっきりしてくると思います。
払える人が払い、そうでない人は緩和治療で楽に逝くようにする。
高額の医療費を使って辛い入院生活を送るよりは、積極的に治療をしないで緩和ケアだけで残りの人生を生きるという選択もこれからはアリだなと思いました
私は、中山先生推薦の肝硬変で死ぬか、思わぬ事故で死ぬか、なるべく痛くなく苦しくない死に方をしたいものだと思うようになりました。

影法師  百田尚樹 講談社文庫
         648円2012年6月15日
 読み終わった後で、しみじみと表紙を見直してしまう。
影法師という題名に涙ぐむこと必死。
巻末の袋とじを読むとみねが幼い頃から、慕い尊敬していた彦四郎への恋心や深い思いが伝わり
切ない。その思いに値する彦四郎の命がけの行動。
そうかこの人は守ると決めたみねとの約束を守った。また、竹馬の友で努力家の彰蔵にみねを託し、その生命を守ることで藩の腐敗をただし、財政も立て直すことを企み、自分は二人の影として生きて死んだ。
命がけなら何をしてもいいか、相手が理解できないままでもいいのか、と思うと大概の人にそれほどの大義はないと思う。彼はみねと彰蔵にかけた。
これは男の愛の思いの強さの物語でもあった。
せっかく文武両道の天才、相手の気持ちを察するに聡い人が、部屋住みでただ生きていくだけの武家のきまりは虚しいものが在る。
理不尽なこの武士の世の強固な枷。その中でもなんとか芽を出そうと、次男以下の若者たちが、誠実に日々鍛錬し精一杯努力する姿がある。厳しい統制の中で人はどれくらい心を自由にできるか、また世のため人のために命をかけることができるか、極限の思いの強さを見る思いがする。

以下、これから読む本 なぜかカドカワがそろってますね。
将軍の料理番 包丁人侍事件帳  小早川涼 
       角川文庫 560円 平成27年6月25日
カインの傲慢 刑事犬養隼人 中山七里 
        角川文庫 720円 令和4年6月25日
勿忘草の咲く町で 安曇野診療記  夏川草介 
        角川文庫 720円 令和4年3月25日

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